Windowsソリティアの生みの親

ソリティア クロンダイクは、これほど知名度や人気があるものの、その陰に隠れた人物についてはほとんど知られていません。つまり、1990年代初頭から世界的に使用されている大人気のデジタル版を作った人物について、ほとんど知る人は居ません。このバージョンのソリティアは、30年以上にわたって、事実上すべてのWindowsデバイスで遊ぶことができます。この楽しい1人用ゲームが私たちのWindowsベースのコンピューターにプレインストールされていることを、誰に感謝すればよいのでしょうか。ウェス・チェリー氏。この名前を聞いたことはありませんか?1980年代後半、マイクロソフト社に一介のインターンとして入社した人物、ウェス・チェリー氏について説明しましょう。ウェス氏は、マイクロソフト社のプログラミング環境で実験を重ね、現在何十億というデバイスにインストールされているデジタル版「ソリティア」の前身を作りました。さて、衝撃的なのは、このゲームはインターンシップの一環として開発したものであることから、ゲームコミュニティへの並外れた貢献に対してウェス・チェリー氏は1セントも受け取っていないことです。

リンゴ園で作業するウェス・チェリー氏しかし、このゲームの開発で直接金銭を得たわけではありませんが、彼にメリットがなかったわけではありません。チェリー氏は、1999年までマイクロソフト社に在籍していましが、その後リタイアして、アップルで仕事をしていました。文字通りの意味です。いえ、彼はマイクロソフト社の競合他社に乗り換えたわけではありません。その代わり、彼はシアトルの西にある島でDragon's Head Ciderという自分の会社を立ち上げたのです。現在、彼はヴァション島にある自分のりんご酒会社のためにリンゴを栽培しています。業界から身を引き、長い間姿を消していたからこそ、彼は比較的素性を明かさずに居られたのです。しかしこれは、誰かが彼の話を知り、有名なオンラインプラットフォームRedditに投稿するまでの話です。この投稿がきっかけとなり、多くの人が興味を持ち、すぐにDragon's Head Ciderのウェブサイトは、物凄い数の好奇心からクラッシュしてしまったのです。その後、チェリー氏はRedditで自らの体験を語ることにしたのですが、その際にそれまで知られていなかった詳細が明らかになったのです。

チェリー氏はRedditで、1988年の夏にマイクロソフト社でのインターンシップから始まった自分のストーリーを人々に紹介しました。当時Windows2.1が開発中でした。彼が空き時間を使ってソリティアを開発したが明らかとなりました。しかし、重要なのは、チェリー氏自身がデジタル版のカードゲームのアイデアを思いついたわけではないことです。事実、このカードゲームのデジタル版も、Windows版ソリティアが初めてではありません。むしろ、チェリー氏は大学時代にMacでそれを遊んでいたのです。彼はマイクロソフト社からこのゲームのWindows版がまだ存在しないことを知って、開発を決意しました。それが、ある経営者の目に留まり、その経営者がこのゲームを手にして奔走することになったのです。チェリー版のソリティアはグラフィックに改良を施し、後にWindows 3.0に追加されました。報酬としてIBMパーソナルコンピュータXTが贈られ、ゲームのデバッグを行うことでさらに研鑽を積んでいったのです。当時、彼は貢献に対する唯一の報酬として完全に納得しており、今でもこれでいいと言っています。

ウェス・チェリー氏は、ゲームに対する金銭的な報酬はありませんでしたが、1999年までマイクロソフト社に在籍し、ゲーム開発に専念する時間を過ごしていました。チェリー氏がデザインしたその他のゲームには、1991年に発売され、Windows OSのゲームアソートにデフォルトで含まれている「Pipe Dreams」などがあります。「Pipe Dreams」は、プレイヤーがさまざまなパイプをつないで液体を最終目的地まで移動させるものです。面白いことに、このゲームもチェリー氏が空き時間に開発したものです。しかし、この時マイクロソフト社は、報酬として彼に数千ユーロの自社株を譲渡しました。1990年代には、ゲームから離れ、主にマイクロソフト社のエクセルを担当するようになったのです。

1999年にマイクロソフト社を退社したウェス・チェリー氏は、プログラミングとソフトウェアから完全に離れることを決意しました。代わりに、りんご酒の会社を立ち上げたのです。しかし、彼は今でも、自分がソフトウェアを開発している会社のハードウェアを使って、コンピューター業界に「足を踏み入れ」ています。ウェス・チェリー氏は、人類文明への未知の貢献に対しても謙虚な姿勢で取り組んでいます。実際、「ソリティアをプレイしたことのある人全員が1セントくれたら、ビル・ゲイツの隣に住める」と冗談交じりに語っていることも知られています。